従来の銀行融資とは違った形で、新しい法人融資サービスが始まっていることはご存知ですか?
一緒に少し見ていきましょう。
=== 従来型の銀行融資の特徴 ===
事業融資と言えば、銀行。
銀行融資の特徴と言えば、
①決算書を詳細に分析される
②資金繰り表や資金使途明細などの詳細資料を求められる
③担当者との面談により、必要理由など説明を求められる
④申し込みから融資決定までの一定期間が必要
⑤過去の実績重視
⑥担保や保証が必要
⑦金利は安い(日銀のゼロ金利政策で下がっている)
⑧小規模事業者への小口融資は消極的(審査コストなど、採算性が悪い)
などがあります。
=== データを活用した新しい融資形態、『データレンディング』の特徴 ===
しかし今、従来の銀行とは違う形の融資が始まっていることをご存知ですか?
まだまだ、シェアとしては従来融資と比較して小さいですが、この動き、今後広がっていくと予想しています。
①~⑧を不要とするなら、何を根拠に融資判断をするのでしょうか?
それは、『データ』です。
財務データや会計データのほか、ネット上にある関連データを自動的に分析することで、瞬時に与信判断を行うフィンテック時代の融資サービス。
預金口座の入出金データや顧客評価データなど、既存銀行があまり活用しないデータ情報を融資判断に活用する融資形態で、「データレンディング」と言います。
データレンディングの特徴は、
①決算書等の審査資料は提出不要
②申込はネットで完結
③融資判断早い
④過去実績より、現時点での状況を重視
⑤無担保、無保証
⑥金利は高め
⑦小規模事業者への小口融資に対応
です。
なぜこうした取り組みが可能かというと、
・預金口座の入出金データで、売上の相手先や金額、仕入代金の支払い状況、公共料金の引き落とし状況、などを確認できる
・楽天、アマゾン、じゃらんなどは、プラットホーム上で、商品・サービスのタイムリーな顧客評価や売れ行きを把握している
・データを活用することで、人手を最小限に抑え、低コスト審査体制を構築(面談担当者や審査担当者がいない)
・銀行では入手が困難だった、タイムリーな売上情報や他行の入出金情報などのデータを取得して、与信判断に活用するため
・短期間返済(期間リスク)と、金利(リスクプレミアム)で、無担保・無保証のリスクヘッジをしている
などの理由です。
=== 具体的なデータレンディングの取り組み内容 ===
以下のような取り組みが始まっています。
企業名 | 融資対象者 | 借入可能額(万円) | 借入期間 | 金利(%) | 申込からの最短融資日 | |
1 | アマゾン | アマゾン出店事業者 | 10~5,000 | 3~6か月 | 8.9~13.9 | 3~5営業日 |
2 | 楽天 | 楽天市場出店事業者 | 50~3,000 | 1か月~3年 | 3.0~15.0 | 3営業日 |
3 | リクルート | じゃらんネット等の掲載事業者 | 10~1,500 | 6年1か月(最長) | 2.0~14.9 | 当日 |
4 | 福岡銀行 | 営業エリア内のMFクラウド会計利用者 | 100~1,000 | 1か月~12か月 | 5.0~12.5 | 当日 |
5 | ジャパンネット銀行 | ヤフオク出店事業者 | 50~3,000 | 1年(最長) | 1.45~8.20 | 翌営業日 |
6 | 住信SBIネット銀行 | 中小企業など | 50~3,000 | 1年(最長) | 1.999~7.999 | 当日 |
7 | アルトア | 弥生会計利用者 | 50~300 | 1年 | 2.8~14.8 |
図表出所;週刊金融財政事情 2018.11.19号 13ページを当事務所抜粋
(注)福岡銀行欄のMFとは、マネーフォワードのこと
=== 注目している住信SBIネット銀行の取り組み ===
中でも私が注目しているのは、住信SBIネット銀行です。
2018年8月から、所定の条件を満たす顧客は、申し込み手続きなしに常時、法人口座の利用状況や売上といった日々の取引データに応じて、「借入可能額」「借入金利」を受け取ることができるようです。
融資判断に、口座移動情報やクレジットカードなどの売上情報も、積極的に活用します。
住信SBIネット銀行の顧客は、融資申し込みをしなくても、「今、いくらの金額、何%で借入できるのか」、ネット画面上で確認できるため、必要になった時にその金額をその条件、無担保、オンライン上で最短即日借入することができます(資金使途は運転資金に限るため、1年以内の12回返済)。
便利な融資商品だと思います。
=== データレンディングのメリット、デメリット ===
データレンディング、私が考えるメリットとデメリットをまとめてみます。
〈メリット〉
・面倒な手続きが不要で融資を受けることができるため、ストレスが少なくなる
・過去の実績ではなく、今現状の状態を基準に融資を受けられるため、過去業績が悪く銀行評価が低くても、今好調なら融資を受けられる可能性がある
・(従来の銀行から融資が受けられない)多額の債務超過など、決算書の数値が悪くても、口座の動きや顧客評価で融資を受けられる可能性がある
・今まで銀行がコスト倒れで目を向けなかった小規模事業者にも、法人融資を受ける選択肢ができる
・小口融資を短い審査期間で受けられるため、資金繰りの心配が減る
・担保や保証が不要なため、資産や信用が小さくても融資を受けられる
〈デメリット〉
・ほとんどの融資の資金使途が運転資金に限られるため、融資返済期間が短め
・金利が既存の銀行融資と比較して高めで、金利負担が重くなる
・面談での銀行員とのやり取りで得られる、事業計画や新規事業に関しての、助言や情報提供が期待できない
・業績不振に陥っても、経営支援やコンサルティングなどの付加価値サービスが期待できない
・融資謝絶された場合、判断基準がブラックボックスとなっているため、事業者から謝絶理由がよく分からない
などではないかと思います。
=== 融資を見越して、準備しておくこと ===
今後の準備のため、住信SBIネット銀行 に口座を開設して、入出金の一部を移してみるのも面白いかもしれませんね。
私は弥生会計で決算申告をしているので、個人的に期待しているのは、アルトアです。資金需要が発生したら、利用してみたいものです。
今後は、口座開設、売上金受取口座の指定、クレジット売上の受け取り、公共料金や各種引き落とし、会計ソフトの選定など、将来的な融資を視野に入れて、選ぶ必要がありそうです。
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